郡敏昭 研究概要
2次元共形場理論はリーマン面とそのモヂュライの理論を駆使して建設され、素粒子の弦理論へと影響をおよぼし華々しく展開してきた。宇宙が4次元であることを考えると、4次元共形場の理論の建設は数学・物理学において大変重要であると思う。しかしシグマモデル、WZモデル等その方向を示唆する研究は早くからあるにもかかわらず4次元共形場の数学的理論はいまだ目鼻のつかないものである。その理由はこの理論を展開するために必要な完備した数学理論が4次元において準備されていないことにあるであろう。一方、4次元の幾何学とゲージ理論はドナルドソンたちにより飛躍的な発展を遂げた。それは空間の幾何と場の理論をつなぐものとしてファイマン積分の内容を明らかにし、物理・数学の不変量の計算に新しい意味を与えてきた。しかし依然として4次元の場の理論を記述するには多くの方法と観点が不足している。我々の当面の目標は2次元共形場理論の建設に用いられる様々な数学理論に対応した4次元多様体上の理論をつくることにあるが、同時にそれが可能となる4次元多様体の特殊性と一般性を明らかにすることも必要である。これまでの研究により共形的平坦な4次元多様体でのディラック作用素の解の正則性と特異点での挙動に関する理論を建設し、また有理型スピノールのコホモロジー論も展開した。この理論に2次元共形場理論の共形ブロックを与えたと同じような役割を期待できるかどうかはまだわからない。現在の課題は4次元のChern-Simons
ゲージ理論の幾何的量子化である。4次元多様体上の平坦接続のモジュライの上に接続を持つエルミート直線束を構成しゲージ変換群のアーベル拡大のこの直線束への作用を調べたい。この直線束の切断の全体は2次元共形場理論での共形ブロックのtheta
モジュラーファンクターと同じく我々の理論において重要である。この空間と先の有理型スピノールの関係を調べることが理論の要であろう。ゲージ変換群のアーベル拡大と4次元Wess-Zumino-Wittenモデルについては すでに満足すべき結果を得ているので研究のこの方向への有効性は確かと思われる。Atiyah-Bottの2次元の平坦接続のモジュライとの関係を詳細に調べることが4次元・3次元多様体の位相幾何に大きく寄与すると思う。(2004/10/14更新 理工学部研究者データベースから抜粋)
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